研修の翌日から使う「AI作業手順カード」――プロンプト集を業務の手順に変える
研修で覚えた生成AIの使い方を実務につなげるには、共通のプロンプト集だけでなく、対象業務ごとの開始条件、入力、確認者、修正基準を一枚に整理します。担当者が迷わず使い始め、確認者と更新できる運用を紹介します。
公開日: / AIの日常活用
プロンプト集だけでは、業務の開始地点が決まらない
研修で紹介したプロンプトを実務で使えるようにするには、「どの資料がそろったらAIを開くのか」「原本のどこまでを渡してよいのか」「出力をそのまま使ってよいのか」を業務ごとに決めておくことを提案します。部署共通のプロンプト集は発想の助けになりますが、実際の作業を始める判断までは代わりにしません。
そこで提案したいのが、週に繰り返す一つの業務に対して一枚作る「AI作業手順カード」です。これは便利な依頼文を集める紙ではなく、AIを使う前後の人の仕事も含めた作業手順です。作成者、確認者、管理者が同じカードを見れば、利用を個人の記憶や得意不得意に任せずに済みます。
カードには依頼文の前後を書く
カードの先頭には、対象業務と開始条件を書きます。対象は「会議後の次回アクション整理」のように、成果物が明確で、繰り返し発生し、誤りが起きても人が確認して止められる業務から選びます。開始条件は「議事録と案件一覧が所定フォルダにそろったら」のように、担当者が迷わず判断できる表現にします。
次に、入力資料の名称、保管場所、AIに渡してよい情報と渡してはいけない情報を分けて記入します。情報の扱いは、自社の情報管理ルールと利用するAIサービスの設定を確認して決めてください。資料が古い、欠けている、版が混在している場合にはAIを使わず、原本を整える担当へ戻す、という停止条件も置くと安全です。
依頼文には、目的、出力形式、参照する資料、AIに判断させない事項、確認してほしい観点を含めます。たとえば「担当者を推測しない」「日付が原本にない場合は空欄にする」と書けば、もっともらしい補完をそのまま採用するリスクを下げられます。依頼文だけを固定せず、出力の使い道と確認方法まで同じカードに載せることが要点です。
確認者と採用基準を、作成者とは別に決める
AIから出た文章は、たたき台、社内共有案、顧客送付前の原稿など、どこまで使うかをカードに明記します。最終確認者は役職名または担当名で指定し、固有名詞、日付、数値、担当者、未確定事項、原本との不一致を確認項目にします。確認者が不在の日や、期限までに確認できない場合の扱いも決めておくと、未確認の出力が流通しにくくなります。
AWSの資料では、専門知識やワークフローを構造化した情報に、検証済みのパターン、避けるべき誤り、段階的な手順を含める考え方が説明されています。また、生成された内容はテスト前にレビューする手順も示されています。非技術部門の日常業務でも、依頼文、避ける判断、確認項目を一緒に残す設計の参考になります。 [1]
ただし、この考え方は通常の生成AI出力が自動的に正しいことを意味しません。業務カードでは、AIの出力と原本を照合する人を置き、実際に起きた入力で試す工程を省かないようにします。確認作業を「AIを使った後の追加業務」とみなさず、成果物を完成させる本来の工程として予定に組み込みましょう。
例外時の停止と代替処理を先に決める
手順カードでは、通常どおりに進められない場合の処理を先に書きます。たとえば、入力資料が不足している、原本の版が混在している、依頼内容に未確定事項が多い、確認者が期限までに確認できない、といった条件です。条件ごとに「原本を整える担当へ戻す」「AIを使わず従来の手順で作成する」「確認者の代行者へ確認を依頼する」「共有を保留する」のいずれを選ぶかを定めます。
例:営業会議後のアクション一覧を作る業務なら、会議メモ、案件一覧、前回のアクション表がそろった時点を開始条件にします。AIには担当者・期限・次の行動を表形式で整理させ、発言者が特定できない担当や期限は「要確認」と表示するよう依頼します。営業責任者は案件名、担当、期限を原本と照合し、確認後にのみ共有する運用にします。
この例では、会議メモと案件一覧で案件名が一致しない場合は共有を保留し、会議の主催者または案件管理の担当者に原本の確認を依頼する、とカードに追記できます。確認できないまま期限を迎えた場合は、AIの出力を送付しないのか、未確定項目を明示した社内向けのたたき台に限るのかも、業務管理者が決めておきます。
質問先をカードに入れ、止まる時間を減らす
出力が想定と違った場合や情報の扱いに迷った場合に備え、カードの末尾には質問先を記入します。業務内容の質問先、情報の取り扱いに関する質問先、AIサービスの操作に関する質問先を分けます。一つの窓口にすべてを集める必要はありません。誰に何を添えて連絡するかを決めることが重要です。
問い合わせには、使ったカードの版、渡した資料の種類、依頼文、期待した出力、実際の出力の問題点、確認者の判断を添えるようにします。機微情報や不要な原文を問い合わせに転載しないルールも必要です。担当者が再現できる情報を残せば、個別の困りごとを次のカード改善に転用できます。
カードの更新は、業務管理者が変更箇所と理由を確認して行います。開始条件、入力資料、情報の持ち出し可否、停止条件、確認者のいずれかが変わったときは、更新日と更新担当を記録します。使わせることより、担当者が安全に使い始め、判断に迷ったときに止められる業務手順にすることを優先しましょう。
AI作業手順カード:初回作成・例外時の見直し用
- 対象業務:__________ 成果物:__________
- 利用する人:__________ 最終確認者:__________
- 開始条件:どの資料・情報がそろったらAIを使うか__________
- 入力資料と保管場所:__________ 渡してはいけない情報:__________
- AIへの依頼:目的/出力形式/判断させない事項/要確認表示の条件を記入__________
- 出力の使い道:たたき台・社内共有・送付前原稿・その他__________
- 確認方法:確認項目/確認期限/確認できない場合の扱い__________
- 例外時の処理:AIを使わない条件/原本を整える担当/代行確認者/共有保留の条件/更新日・更新担当__________
出典・参考資料
- AWS(確認日:2026-10-12)
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