社内問い合わせのAI回答案を「送れる・確認する・渡す」に分ける運用
人事・総務・情報システムの窓口でAIに回答案を作らせる際、全件を同じ深さで確認しないための方法を解説します。問い合わせを3区分に分け、原典照合、責任者確認、即時エスカレーションの判断を運用表にします。
公開日: / AIの日常活用
AI回答案は、送信の自動化ではなく振り分けから始める
社内問い合わせにAIを使うとき、最初に決めるべきことは「AIの回答をどこまで信用するか」ではありません。問い合わせごとに、誰がどの原典を見て、どの条件なら送信できるかを決めることです。回答文の作成をAIに任せても、適用対象、改定日、例外条件が異なれば、そのままの送信は誤案内につながります。
AWSの公開記事では、記録をAIが3分類し、通常と異なるものや重大なものを担当チームへ通知する構成が紹介されています。対象はセキュリティ運用であり社内問い合わせとは異なりますが、AIの分類を人の確認優先度を決める補助に使う考え方は、窓口業務にも応用できます。 [1]
対象業務を10件程度に絞る
最初から全問い合わせを対象にしないことを勧めます。まずは毎週発生し、回答の原典が一つに定まり、窓口担当者が回答後の状況を追える問い合わせを10件程度選びます。たとえば、経費申請の締切、社内システムの利用申請手順、会議室予約の方法、定型的なアカウント再発行依頼です。
例:パスワード再発行でも、本人確認済みの社員に既定の手順を案内するだけなら候補にできます。一方、退職予定者の権限、取引先アカウント、障害中のアクセス不能は、同じ「ログインできない」問い合わせでも条件が異なるため、初期対象から外します。
問い合わせの件数だけで選ぶのではなく、原典の保管場所と更新責任者を確認してください。最新版かどうか分からない規程や、口頭運用が多い業務では、AI回答案の導入より先に原典を整える方が安全です。
A・B・Cの3区分を先に定義する
Aは「定型回答案を作成し、窓口担当者が原典と照合して送る」区分です。金額、個人情報、雇用条件、契約判断を含まず、対象者と適用日を確認できるものを置きます。送信前にAI案と原典を照合する担当は、AIを操作した人と同じでも構いませんが、照合項目を固定します。
Bは「AIには下書きを作らせるが、規程担当者の確認後に送る」区分です。例外規定、申請期限の救済、部門ごとに異なる運用、個別の雇用事情がある問い合わせを含めます。窓口担当者はAI案を完成回答として扱わず、確認者に質問文、参照原典、判断が必要な箇所を渡します。
Cは「AIに入力せず、指定責任者へ直ちに渡す」区分です。個人情報の削除依頼、雇用条件の確約、契約上の約束、事故・障害、懲戒やハラスメントに関する相談など、内容自体の取り扱いに慎重さが必要なものを置きます。Cの範囲は、人事、法務、情報セキュリティなどの責任者と決めてください。
例:育休制度について「一般的な申請窓口を教えてほしい」という質問は、原典が整っていればBにできます。しかし「自分の勤務条件でいつから何日取得できるか」という個別判定は、雇用条件や例外の確認が必要です。AIに個別事情を渡す前に、BまたはCとして担当者へ回します。
A区分でも確認を省かない
A区分は無確認送信の区分ではありません。窓口担当者は、少なくとも対象者、適用日、参照先、例外条件、次の連絡先を原典と照合します。AI案に原典にない期限、断定表現、手続きの省略があれば削除または修正し、原典の名称と保管場所を回答に添えます。
AIへの指示には、回答案だけでなく確認用の出力欄を設ける方法があります。「根拠にした文書名」「確認が必要な前提」「不明な点」「送信してはいけない条件」を分けて出力させます。ただし、その欄に書かれた根拠も正しいとは限らないため、担当者が原典を開いて確認します。
30分で最初の振り分け表を作る
研修の翌日には、窓口担当、業務責任者、原典の管理者の3者で30分の作業時間を取ります。対象候補10件を並べ、A・B・Cを仮置きし、区分の理由、原典、確認者、迷った場合の連絡先を記入します。この時点では完璧な分類を目指さず、迷うものをBまたはCに寄せるのが安全です。
例:経費申請の締切案内をAに置く場合、原典は経費規程と申請システムのお知らせ、照合者は総務窓口担当、例外がある場合の確認者は経理責任者、と記入します。締切延長の可否を尋ねる内容はBへ移し、AI案を作成しても経理責任者の確認なしには回答しない、と決めます。
週1回、誤りよりも境界を見直す
週1回10〜15分、AI案を使った問い合わせを振り返ります。見るべきなのは利用件数だけではありません。Aなのに確認に時間がかかったもの、BからCへ上がったもの、原典が見つからなかったもの、AI案から削除・修正した理由を記録します。
差し戻しが続く問い合わせは、AIの指示文だけを直すのではなく、区分、原典、確認者のどこに不足があったかを確認します。AからBへ上げる、原典を更新する、確認担当を明記する、といった変更を振り分け表に反映すれば、担当交代後も判断を引き継ぎやすくなります。
記入用:社内問い合わせAI回答案の振り分け表
- 対象問い合わせ(最初の10件まで):
- 窓口担当者/業務責任者/原典の管理者:
- 区分(A=原典照合後に送信、B=規程担当者確認後に送信、C=AIに入力せず即時エスカレーション):
- AIに渡してよい情報/伏せる情報:
- 照合する原典名・保管場所・最新版の確認方法:
- A区分で確認する項目(対象者、適用日、例外条件、連絡先など):
- B・C区分の確認者、最終判断者、回答期限:
- 週次見直しで記録する修正理由と、区分を変更する条件:
出典・参考資料
- AWS(確認日:2026-10-16)
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